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ノミについて – アイン動物病院

ノミってどんな生き物?

“ノミ”は世界のあらゆる場所で確認できる生物です。そしてすべての動物にとって最も一般的な外部寄生虫です。ノミは体長約2~2.5mmほど、目で見ることのできる砂粒ほどの大きさで、吸血性の羽のない昆虫です。運動機能にすぐれ、跳躍距離は体長の約60倍、そして約100倍もの高さに飛び上がることができます。

飽血時には体重の約20倍もの吸血をします。種類は多いのですが飼い犬や飼い猫に見られる最もよく見られる種はネコノミ(Ctenocephalides felis)です。ネコノミ以外にはイヌノミ、ヒトノミなどが一般的です。これらのノミは人にも寄生し吸血します。

人の住む環境が大好き!

元々ノミは熱帯や亜熱帯地域の湿度の高い場所で生息していました。しかし、地球温暖化や快適な生活を求める人間社会の環境に適応し、活動範囲を広げてきました。日本では北から南まで全国どこでもごく普通に見られます。ノミは外出した動物や人間に付いて家庭に入ってきます。

屋内で直射日光が当たるところにノミはいません。反対に屋外でも適度な湿気と暖かさがあれば繁殖は可能となります。家の中では卵や幼虫の状態でタタミやカーペット、家具の隙間などに潜んでいます。幼虫期は、光から逃げようとする負の走光と下へ向かおうとする正の走地性を持つので、見つけることは難しくなります。犬や猫たちが最も好み、1日の大部分をすごす場所、ベッドやケージの床などが典型的な幼虫の繁殖場所となります。

最近は気密住宅が増え、また全体暖房に変わってきていますので、お部屋の中はノミにとっては最良の環境なのです。当院では12月に入ってからノミによる被害や来院が増えています。これは暖房によりノミが活性化したことが考えられます。

 

ノミのライフサイクル

ノミに理想的な環境下では2週間程度でそのライフサイクルを完了しますが、栄養が足りなかったり温度が低いなど環境が悪いと2年近くもかかります。卵やサナギの状態で長く、寄生に最適な環境になるのをひたすら待っています。

1匹のノミは1日に約20個、一生の間に約400個の卵を生みます。
犬や猫のほかによく寄生する動物はイタチ・ヒツジ・ウシ・馬・ネズミなどです。もちろん人間にも寄生します。排泄物(糞)は黒く固い砂粒くらいの大きさです。湿らせた紙の上などに置くと動物から吸血した血液で赤くなるのでノミだということがすぐわかります。

 

成虫の期間
ネコノミの成虫は宿主に寄生すると移動はしません。大部分の成虫は宿主(特に猫の場合)に食べられてしまいます。宿主から落ちたり離れると約4日以内で死んでしまいます。運良く生き残っても成虫になって10~20日が寿命なのです。
メスの成虫は産卵が命です。宿主に寄生して吸血後、産卵開始です。寄生してから48時間以内に行われます。1日4~20個を産卵します。
卵の期間
卵の発育には湿度50%以上が必要です。約3~4日で幼虫が出てきます。卵は約0.5mmの長さで楕円形をしています。産卵されると宿主の毛づくろいで食べられてしまいますが運良く残った卵は宿主の住処に落下します。卵の発育は温度と湿度に影響され、充分に発育した幼虫は卵の殻を破って孵化します。産卵後3~4日で幼虫になります。
幼虫の期間
幼虫は充分に成長すると繭をつくり、サナギになります。繭の中で新しい宿主が現れるのを待ちます。最長1年間そのままの状態を続けることがあります。卵とさなぎの期間は乾燥や殺虫剤などに影響を受けず生きていけます。
ノミの幼虫に最適な環境は50%以上の湿度と温度です。湿度が低い(乾燥している)と生育が遅くなります。
幼虫は動物に対する寄生性はなく、フケやアカ・床に落ちている食べ物等を食べて育ちます。特に成虫の糞は発育にとって欠く事のできないものです。ノミの幼虫は小さなうじ虫(約0.5cm)のように白っぽい体ですが、成虫の糞を食べるようになると黒っぽくなります。幼虫は、習性としてカーペットや家具の下の薄暗い場所にいてほとんど移動しません。幼虫は約2mmほどですが成熟すると約4mmの長さになります。幼虫の発育には比較的高い湿度が必要でさなぎになるまでに2回脱皮します。幼虫期間は7~18日間です。
幼虫は、絹状の繭を紡ぎ、その中でサナギへと変態します。繭には粘着性があり、カーペットの線維の中で環境中のゴミなどがくっつきカモフラージュされています。サナギになって約10日で羽化の準備が整います。成虫発育を完了したサナギは、繭から出るきっかけとなる刺激を受けるまで、数日から数週間、時には1年以上も繭の中に留まっています。
さなぎから成虫へ
動物の発する熱や振動を感知してさなぎから成虫に羽化します。
羽化した成虫は、直ちに宿主を捜し始めます。宿主の発する、体温、振動や二酸化炭素に誘引されて宿主を見つけます。もし宿主が見つからなくても、吸血なしに1週間から3週間は生存出来ます。宿主に寄生した後は体の表面を動き回り血管を捜し、数秒後には吸血を開始し、8~24時間の間に交尾をします。雌ノミは1日に自身の体重の2倍の重さの卵を生みます。数にして20個程です。それだけの卵を生むために1日に体重の15倍もの量の血液を吸血します。

ノミの被害

ノミの寄生を受けた犬や猫は、その血を吸われてしまいます。貧血になるほど大量の血を吸われるわけではありませんが、吸血するときに、唾液を動物の体内に注入し、これに対する反応としてかゆみが生じます。

さらに、ノミから注入される物質によって、激しい皮膚炎を起こすことがあります。これは一般にノミアレルギーといわれるもので、こうなってしまうと、たとえごく少数のノミの寄生を受けただけでも全身的な皮膚炎を起こします。

ノミに寄生された動物は、吸血とそのときに体内に注入される物質によって皮膚にアレルギーを起こします。ノミは成虫だけが寄生性で、卵、幼虫、サナギはカーペットなど宿主の周囲環境で発育します。犬や猫に寄生して害となるのは、刺咬によるかゆみや不快などの直接的な害のほか、刺咬が原因となっておこるアレルギー性皮膚炎があります。ノミによるアレルギー性皮膚炎は一年中見られ、腰背部や尾根部などに多く発症し激しいかゆみを伴います。現在は犬も猫もネコノミによる寄生がよく見られます。ノミはまた、瓜実条虫というサナダムシの中間宿主でもあります。ノミに吸血されても感染しませんが、犬や猫がグルーミング中に偶然ノミを食べてしまうと、瓜実条虫の感染を受けることになります。

ノミの害は犬・猫にとどまらず人間にも及びます。犬・猫に寄生するノミはイヌノミやネコノミという種類なのですが、これらのノミは人間も襲います。実際、日本では最近、ヒトノミを見ることはなく、人間を襲っているほとんどが犬・猫由来のノミ、特にネコノミであるといわれています。被害としては、刺激やかゆみによる不快感、ノミアレルギーによる皮膚炎、貧血などです。さらに瓜実条虫(サナダムシ)を媒介します。人では、四肢とくに下腿(足の下のほう)に発赤や発疹などを生じ、激しいかゆみを伴うことがあります。また、ノミは【猫ひっかき病】の病原菌を運んできます。猫によるひっかき傷や咬傷から人に感染する病気です。

 

ノミを予防! 見つけたら即、駆除

一度適切な宿主に寄生すると、その動物の恒久的な外部寄生虫になります。寄生するのは成虫のオス(♂)とメス(♀)だけで、幼虫時は畳やカーペット、家具などの隙間などにいて、ゴミや落ちている食べ物などを食べています。

人にとって居心地のいい環境は、ノミにとっても居心地のいい場所です。日頃から住居の清掃は丁寧に、時には家具なども移動してホコリを取り除きましょう。

ホコリの中には幼虫の栄養がいっぱいです。カーペットはお天気のいい日には干したり、出来るものは洗濯するようにしましょう。できなくても掃除機を丁寧に書けるだけでもずいぶん違います。
お天気がいい日は家の空気を入れ替え、ペットのベッドやサークル・ケージなども洗う用にしましょう。

お家の中でも直射日光が当たる場所にノミはいません。洗えなくても直射日光に当てることで幼虫や成虫はかなり駆除できます。

そして、飼われているペットたちへの予防がとても大切です。


毎日観察、毎日手入れ

ノミとり櫛を使って毎日少しずつ取り除いていくのは、動物とのコミュニケーションを図れる優れたノミ駆除法ではないかと思います。

ノミとり櫛も毎日、根気よく、時間をかけて取っていかなければなりません。ただし、ノミとり櫛だけでそう簡単に、すべてのノミを駆除することはできません。ノミとり櫛でノミが取れるということは相当数のノミが寄生していることを意味します。動物の体表にいるノミの約4割は動物がグルーミングなどで自分で食べてしまいます。

この場合、ノミが完全にいなくなる前に何回も吸血されてしまい、ノミアレルギーになってしまうことがあります。そして、周囲の生活環境にはこれから寄生しようとしているノミの予備軍がたくさんいます。こうなるとノミとり櫛だけでは間に合いません。

したがって、すぐにノミを完全に駆除することが大切で、そのためにはノミとり櫛だけでなく、薬を使うことが必要になります。

 

ノミは100%予防

ノミ駆除の原則の第一は、今寄生しているノミの成虫を駆除することです。そのためには即効性の高い(効きめが早い)薬を使います。即効性の高い薬には、飲み薬やパウダーやシャンプーがあります。スポットオン製剤も、比較的早く効果が見られます。(12から48時間)

ただし、成虫を駆除しても、成虫がいた環境には、ノミの卵や幼虫、サナギも存在しています。やがては、これらが発育して成虫となり、再び犬や猫を襲います。また、動物から離れた成虫が再び寄生のチャンスをうかがっていることもあります。そこでいったん成虫を駆除した後も、再び寄生を受けることのないように、残効性のある(効果が持続する)薬を使うことが必要です。残効性のある薬としては首輪タイプやスプレーやスポットオンタイプのものが使われています。

ノミ駆除薬は動物病院で処方してもらうほか、薬局や薬局店、場合によってはペットショップなどでも購入することができます。事実として、薬店やペットショップで購入できる薬より、動物病院で処方してもらう薬の方がよく効きます。
ノミは放っておいて、自然にいなくなるものではありません。積極的に駆除することが必要です。動物病院で処方してもらうか、市販の薬ですますかは、最終的には、いろいろな事情を考えた上で飼主が判断すべき問題ですが、一日も早く完全にノミを駆除するのには、病院で薬を処方してもらうのがよいと思います。

ノミ取り薬の種類
スポットオンタイプ

毎月1回処置するタイプで首の後ろの肩甲骨の間に垂らすことで経皮吸収され、皮下全体に行き渡ります。ノミが吸血すると有効成分もいっしょに吸収しその効果を発揮します。多頭飼育の飼主は、動物同士が投与部位を舐めあわないように注意が必要です。舐めた量によっては中毒症状を呈しますので注意しましょう。頚の付け根辺りだと自身で舐めることができないためより安全です。

パウダータイプ

蚤取粉のことです。現在発売されている製品は以前と比べ安全性が格段に向上しています。使用方法は若干異なりますが犬や猫の身体全体に降りかけ、数時間後払い落とすか、ぬるま湯でよく流すのが一般的です。そのままにしておくと、猫の場合舐めてしまいますので大変危険です。ノミのいそうな場所にまくのも効果的ですが放置後掃除機で十分に吸引するようにします。その間、犬や猫が入らないようにしましょう。

首輪タイプ

パウダータイプは、首輪から少量の蚤取粉が出るものです。初めてつけた時はたくさんの蚤取粉が出て、犬が粉を吸い込んだりして嘔吐などをみることがあります。

ガスタイプは、首輪から有効成分がガスとして蒸散し、ノミを駆除するのですが、雨などで首輪が濡れると有効成分がいっときに蒸散してしまいます。このとき、装着周囲に多量の成分が付着し皮膚炎などを起こしたり中毒症状を呈することがあるので十分に注意します。 油性タイプは有効成分がにじみ出てきて皮膚表面を覆うことでノミを駆除します。独特の臭いがあるため装着を嫌がったり、元気が無い、食欲が低下することがありますので注意が必要です。

シャンプー

シャンプーは完全に駆除するのではなく仮死状態になったノミを洗い流すということになります。ノミが残ったままですとまた元気になりますので完全に洗い流すようにします。使い方は他のシャンプーと同じですが、よくシャンプーした後しばらくそのままに(通常より長く)しておきます。その間犬が身体を舐めないよう注意します。

経口薬

月に一度投与するだけで、卵から成虫への成長を妨害してノミの繁殖を抑えます。卵は成虫まで成長せずに死滅しますから、ノミは増えません。