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レプトスピラ – アイン動物病院

レプトスピラ

レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌がヒトと多くの動物種へ感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)です。レプトスピラは、犬などの飼育動物や家畜、野生動物に感染し、その動物の腎臓などに保菌されます。ヒトは保菌動物の糞尿や汚染された土壌に直接、あるいは間接的に接触し、感染します。レプトスピラは届け出伝染病で、2005年から2017年の間で毎年19~71匹発生報告がされています。ところが、確定診断がされずに疑いのまま見過ごされているケースや血清型を特定されていない例も多いと推察されます。

レプトスピラ症で最も注意が必要なのは、洪水などの水害や地震などの後です。海外のみならず、国内でも台風やそれに伴う洪水、土砂災害の後にヒト・犬でのレプトスピラ症患が確認されています。(広島、京都、熊本、兵庫、大阪、茨城、埼玉など)洪水や土砂災害後、水や土壌と接触する場合には汚染されている可能性のあるので注意が必要です。

また、海外においても全世界的に流行が見られているため、海外渡航者や輸入動物・密輸動物による輸入感染の警戒をしなければなりません。

 

原因

レプトスピラは、病原性と非病原性に分類されます。レプトスピラは250種類以上の多くの血清型に分かれ動物によって固有の型があり、国内でレプトスピラ症の原因となった血清型は約14種類です。国内では監視伝染病(届出伝染病)に指定されている(牛、豚、犬などが対象)7つの血清型、ポモナ(Pomona)、カニコーラ(Canicola)、ハージョ(Hardjo)、イクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、グリポティフォーサ(Grippotyphosa)、オータムナリス(Autumnalis)、オーストラリス(Australis)です。

国内の犬から検出されたレプトスピラは、カニコーラ、イクテロヘモラジー、コペンハーゲニー(Copenhageni)、ヘブドマディス(Hebdomadis)、オータムナリス、オーストラリス、ポモナ(Pomona)、グリポティフォーサ(Grippotyphosa)です。

人獣共通感染症として問題なのはイクテロヘモラジー(Icterohaemorrhagiae)、カニコーラ(Canicola)、オータムナーリス(Autumnalis)、ヘプドマティス(Hebdomatis)、オーストラ―リス(Australes)、ピロゲネス(Pyrogenes)などです。

この中でIcterohaemorrhagiaeはヒトが感染すると黄疸出血症の”ワイル病”を発症します。

レプトスピラ症は昔は風土病として恐れられていました

 

感染

菌に感染された河川などの水、汚染された土壌で作業することで感染の確率が高くなります。日本では風土病といわれるくらい古くからある病気です。

感染ネズミの尿で汚染された土壌、水、食物などから経皮、経口感染します。

感染の経路は主に汚染された水を飲んだり傷口などが水に接触するなど、特に洪水後の河川では感染するケースが多く注意が必要です。

ペットについてもその感染経路は同じです。以前は水田での素足での作業による農業従事者の感染が一般的でしたが、

近年ではアウトドアスポーツの流行でトライアスロンや水辺でのスポーツ愛好者に感染症例が増加しています。

感染リスクの高い職業は水田作業・土木工事・野外調査・畜産業・獣医師などです。

Canicolaは犬同士の直接感染です。

 

犬の発生状況

犬のレプトスピラの症の発生は国内だけでなく、全世界的にも見られる感染症です

1999年の報告では、6地域(北海道、静岡県、富山県、兵庫県、岡山県、沖縄県)のワクチン注射前の健康犬490匹におけるレプトスピラに対する抗体保有状況を調べたところ、抗体陽性率は8.9〜40.0%でした。

また、2004年に158匹の届出報告がされた後、2005年から2017年の間に毎年19~71匹の届出があり、2017年に届出のあった都道府県は、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、大阪府、奈良県、鳥取県、広島県、山口県、高知県、福岡県、宮崎県、沖縄県の1府14県です。

これらは、監視伝染病(届出伝染病)の7つの血清型(ポモナ、カニコーラ、ハージョ、イクテロヘモリジー、グリポティフォーサ、オータムナリス、オーストラリス)に限られます。血清型が限られたものだけであり、他の血清型、そして、届出されていないものは含まれないので、本来の発生件数よりもかなり少ないと思われます。

2017年、2018年と熊本、大阪で多発したことは記憶に新しく、十分な警戒が必要なことを暗示しています。

 

症状

犬では発熱や粘膜の出血が、人では発熱や筋肉痛などが。

犬への感染率は比較的高く、カニコーラに感染した犬は発熱、粘膜からの出血、潰瘍などが見られます。

尿毒症を起こし死亡することもあります。黄疸型でも出血が見られ死に至ることもあります。

人が黄疸出血症のワイル病に感染すると急な発熱、筋肉痛が見られます。

続いて黄疸が出て重症になると肝臓や腎臓障害が見られ、皮下出血、結膜充血が見られるようになります。

高熱と肝臓・腎臓からの出血で居棒することもあります。カニコーラに感染してもワイル病ほど重症にはなりません。

宮城県ではレプトスピラ症の発生状況を追跡調査し、1959年に822名(内死亡32名)で発症し大流行しましたが、その後は農作業も機械化され激減しています。

1989年は1名発症、宮城県では1999年には3名(死亡1名)の発症例が報告されているほか、山形県や新潟県においては増加しているとの情報もあります。

 

予防

犬はカニコーラ型の自然宿主です。犬同士が接触する場所、多頭飼育では感染の危険があります。

ペットを感染リスクの高い水辺に連れて行く場合は、ワクチン接種が必要です。農業従事者などは素足で作業をしないことです。

犬へのワクチン接種が有効ですが、初回は必ず2回接種し、のち一年ごとの追加接種をしなければ効果が期待できません。年二回のワクチン接種を推奨している動物病院もあります。レプトスピラのワクチン接種で気を付ける点がもう一つあります。現在、レプトスピラのワクチンは、2種(イクテノヘモラジー、カニコーラ)、3種(イクテノヘモラジー、カニコーラ、ヘプドマティス)、4種(イクテノヘモラジー、カニコーラ、グリッポチフォーサ、ポモナ)のものが販売されていますが、3種の単独のワクチンはありません。

レプト2種が含まれた 7種・8種ワクチン、レプト3種が含まれた 9種ワクチン、レプト4種が含まれた10種ワクチン があります。

レプトスピラワクチンを新規で接種するばあい、もしくは、3種・5種・6種ワクチンのものから追加接種する場合は、レプトスピラワクチン2種か4種かを3~4週間後に2回目の接種をする必要があります。

9種を選んだ場合は、9種を3-4週間間隔で2回の接種が必要です。

この二回目の接種をうけていないケースが非常に多いので確認をしてください。

レプトスピラ混合ワクチンの1回接種だけだと、最長でも半年しか効果は持続しないため注意が必要です。

海外では(とくにアメリカ)、近年 グリポティフォーサ、ポモナの発生が優勢を占め、4種(グリポティフォーサ、ポモナ、イクテロヘモラジー、カニコーラ)のワクチン接種で高い効果が認められており、2種(イクテロヘモラジー、カニコーラ)ワクチンは、他血清型への交差防御作用が認められないため現在は推奨されていません。

日本でおいても、特に大阪の浮浪犬の調査では、グリポティフォーサ、ポモナの抗体陽性率は約35%にも上ります。また、この二種は、犬では無症候型で推移することが多いため犬への感染に気付かず、ヒトへ感染してしまうことがあり注意が必要です。

さらに気を付けなければならないのが、レプトスピラ症から回復しても犬の尿にレプトスピラ菌が排菌されているため、そこからの二次感染の危険性にも留意しなければなりません。中には生涯排菌を続ける場合があるので、回復しても安心できません。